オチのないリストランテ
久しぶりにイタリアンにきている。
熟練の手つきで玉ねぎのバラバラ殺人遺体を生産した。よく切れる包丁の刃先で、まるで肩をトントン、と叩くかのように落としていく。このあと彼女らは同様にして骨の一片も残さずミンチにされた牛や豚と混ぜこぜにされて焼かれるのだろう。ああ、美味しそうなハンバーグ。
ランチタイム、時はまだ13時だというのに、店内には僕一人しかいない。なにやら厨房のシェフたちはみな顔が暗い、照明のせいだろうか。
…
「港町がイタリアンのキッチン」などといえば聞こえはよいが、その内訳はまるでヤクザの様相をなしてくる。
就学時、ガキ大将をしていたような野蛮とその腰巾着、身寄りのない鬱屈者、学や教養、金がなく頭脳労働組織への切符を手に入れられなかった者…そんな「普通の社会」に、正常のレールを走る汽車の後ろについていけなかったアウトローの溜まり場がここ、厨房だ。
要するに、キレたらなにをするか分からないような恐ろしげな連中といえる。
時折、なにを勘違いしたのか育ちのいい坊やが紛れ込んではあまりの手荒さからあっという間に追いやられるのが常で、そんな連中が雁首揃えて刃物やら火器を扱っているのだからとんだ集会所が小洒落た扉の向こう側に広がっているんだ。
……
この日は、サツマイモのポタージュ、前菜にナスの包み揚げとシラスのアーリォオリォを食べた。おいしかった。