お茶の声が聴こえるか

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不倫と青い春

不倫している大人を見ると、不意に電車でイチャつく横顔に高校生を思い浮かべる。 実に嬉しそうで、幸せそうで、鼻の先が伸びた顔。必要以上にタッチが多くて、マスク越しにキスをしていて、視線と視線がまるで愛撫なあの2人。 不倫してる。 見ればわかる。 …

今日が雨でよかった。

とても嫌なことがあった日にくらい、雨が降っていたらいいと思う。ああ、ツいてなかったな、泣きっ面にハチだな、って思えたらいいなと思う。そうでなきゃ、きっと誰のせいにもできないままに涙も流せやしないんだ。 昔から雨が大嫌いだった。 雨の日は勝手…

自家焙煎と加齢

僕は珈琲が大好き 味がソムリエのようによくわかるとか、淹れるのがとっても上手とか、豆の種類に詳しいとか、そういことは特にない。 けど、珈琲豆をミルの高速で回る刃で粉にする、あの何か始まりそうな予感、フィルターの角を折ってから広がるあの一手間…

冬と猫背

つい、つい猫背になってしまう季節だ。 地面に散りばめられた落ち葉の絨毯と宝石のような銀杏を見つめたりだとか、出会いと別れに肩を落としたりだとか。それから、そう、降りかかる冷気に当てられて、まるで猫のように身を丸めてみたりだとか。 冬の何が最…

だから今日、僕はゴミになります。

2018年12月も暮れを迎えようとしている。 年の瀬ということもあってか、ゴミを捨てに行くと街中に沢山のそれが溢れている。みんな大掃除をしているのだろう、偉いことだ。その内訳は洋服、食器、家具、家電…多岐にわたり、小さな山脈を形成していた。僕はそ…

鉱石(あるいは火山)

黒人を見た。 ザラザラとした、光の全てを吸い込みそうな暗い肌、激しくも艶やかに唸る長く伸びた黒髪、それから、決して見透かすことのできない黄色味がかった瞳。 琥珀のような瞳。 まるで鉱石のようだった。 とても美しい彼らを僕は、芸術品か工芸品、そ…

ドーナッツ

ドーナツがある。 僕はドーナツがだいすき。 特にアンドーナツがすき。 真ん中にその体の半分くらいを占める大きな穴の空いた輪っか。小麦粉と油。 小さい頃、どうしてドーナツに穴が開いているのかよく考えた。輪投げをするためなのか、輪っかを覗いてドー…

蛇口をひねる話

ありえない妄想に囚われる時がある。 それは例えば、映画 It であったような蛇口から血が吹き出したり、排水口から髪の毛がワンサカ出てきて引きずりこまれるといった、そんな妄想じみた不安。 洗面台に小さな羽虫が2匹、どこから入ったのか飛んでいた。僕の…