お茶の声が聴こえるか

2019-01-01から1年間の記事一覧

言葉と人格とたまねぎ

扱う言葉と人格とでは、どこまでが一体のものなのだろう。 同じ言葉を使ったところで同じ人物にはなれないし、ところが同じ人物が異なった言葉を使うようになると少し淋しい気持ちになる。なんだか、僕の知っていた彼女とは違うみたいで。 言葉と人格との関…

高円寺

僕はこの高円寺という街に対してとりたてた思い入れはない。ただ人が暮らし、人が訪れ、人の去る他愛のない街だ。 大学生の暮れ、当時の彼女にも振られてどいつもこいつもクソッタレだな!1番のクソッタレは…言うまでもなかったが、そんな折に始めた出会い系…

ジャパンレールウェイ

僕はよく、電車に乗る。 それはもちろん都会暮らしならではの車を持てないだとか、仕事で使うだとか、経済面での理由もあるのだけれど、とはいえ僕は子供の頃から電車が好きだった。まず最初に蒸気機関を好きになった。機関車トーマスとかいう、汽車にデカイ…

変身願望

人は皆、なんらかの変身願望をもって消費を行う。 例えば、洋服を買うこと、化粧をすること、あるいは家を買うこと。 中でも、僕は髪を切ることに重きを置いてきた。美容院に行きさえすれば今までの鬱屈した取り柄のない液体のような自分を切り落として、洗…

愛への誘いを嗅ぎつけて

部屋に花を飾る習慣ができたのは、一人暮らしを始めてからだ。家族と暮らしていた頃は目に入る総雑なガラクタ達と耳に入る他愛のない会話、それから夕食の香りで満たされて花の付け入る隙が1mmもなかった。 花を生けていると、部屋にとある匂いが漂うことと…

冬と猫背

つい、つい猫背になってしまう季節だ。 地面に散りばめられた落ち葉の絨毯と宝石のような銀杏を見つめたりだとか、出会いと別れに肩を落としたりだとか。それから、そう、降りかかる冷気に当てられて、まるで猫のように身を丸めてみたりだとか。 冬の何が最…

綺麗な花には棘がある

そんな慣用句がある。 愛想のない美女を指して使われることの多い言葉だと思う。バラの棘が、彼女を食べてしまわぬやう痛くて鋭いように、厳しくも辛い態度をとるのだとどこかの誰かは言っていた。 ところで、バラの棘が実際に彼女を草食動物から守ってくれ…