お茶の声が聴こえるか

僕らのいた「こどか」

幼い頃、「こども会館」という施設へよく遊びに行っていた。みんなは「こどか」と呼んでいた。

 

そこには直径1.4mはありそうな輪っかのおもちゃが置いてあった。僕らは、その穴に入ってゴロゴロと会館内を転がる遊びに明け暮れたものだ。

また、その輪っかを重ねて砦のようなものをつくることも多かった。輪っかは城であり、馬であり、そして通貨でもあった。輪っかで転がるレースに勝利すると、より多くの輪っかを手に入れることができた。輪っかの天辺からの眺めは、そりゃあもう鼻高々な気分にさせてくれる。

 

「こどか」内で輪っかは力の象徴であった。

 

また「こどか」では毎日ワンチャンス、窓口のおばさんとジャンケンをすることができた。3連勝すると「プラ板チケット」を獲得できるプラ板ジャンケンだった。

鞄や筆箱にそのプラ板で作ったオリジナルのストラップをぶら下げるのが僕らにとって最高のオシャレだった。

プラ板チケットコレクターもいた。

 

みんなの遊び場だった「こどか」は、学年が上がるに連れ段々と過疎化していった。塾や習い事、それからガールフレンドで忙しい様子だった。

 

僕だけがずっと「こどか」に残り続けた。

やがて「こどか」にいるのは僕だけになっていた。僕だけがずっとジャンケンしてた。

 

気づけば僕は「こどく」にいたんだ。